JULIUSZ ZARĘBSKI ユリウシュ・ザレンプスキ［1854年～1885年］

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知られざるポーランドの作曲家ザレンプスキのことは、師であったフランツ・リストが愛弟子ザレンプスキに宛てた手紙でその素晴らしい才能を伝えている。

 

“もうかなり前から人として、そして芸術家として君のことを尊敬し感嘆している。君がポーランド人であり、その高貴なポーランド気質が作品に反映されているのだ。見事な手腕で作曲されたそれらのポーランド作品は、知れば知るほど人気を博すであろうと私は確信している”

 

ユリウシュ・ザレンプスキは1854年2月28日に当時ロシア帝国領であったジトーミェシュで、貴族の血を引く国家公務員の家庭の第二子として生まれ、1885年故郷のこの地でわずか31歳の若さでこの世を去る。ショパンと同じく結核を患っていた。

 

幼少時代は母親からピアノの手ほどきを受けたあと地元で学び、16歳から2年間、ウィーンの音楽院にてピアノをヨーゼフ・ダックス、作曲をフランツ・クレンに師事。その後、ペテルブルクの音楽院でも学び優秀な成績を得て卒業、演奏活動を開始するが、その後ローマとワイマールにおいてリストの元で研鑽を積む。ナポリ、パリ、ローマ、ロンドン、ワルシャワなどで華々しく演奏活動を成功させていた頃、リストの弟子でドイツ人ピアニストのヤニーナ・ヴェンツェルと結婚し、2人でデュオ活動も行う。26歳からはベルギーのブリュッセル音楽院で教授として後進の指導にもあたるが、この音楽院ではポーランドの作曲家、ヘンリク・ヴィニャフスキもヴァイオリン科の教授として先に就任していた。

 

就任後間もなくして結核を患い、作曲家としても大きなキャリアを築き始めた時に、志半ば31歳の若さで亡くなったことが惜しまれる。しかし、僅か5年ほどの作曲期間の中で書かれた作品には素晴らしいものが少なくない。

 

ショパン同様にピアノ作品に集中して作曲し、ショパンの音楽的スタイルを受け継ぎ、ポロネーズ、マズルカ、ワルツ、バラード、舟歌、子守歌、即興曲などソロの演奏会用作品に加え、連弾曲も作曲した。ショパンの影響はポーランドの民族的な音楽要素、また美しい旋律と独創 性溢れる和声進行、またリストの影響はヴィルトゥオーゾ的な演奏技法と入り組んだ和声の色彩などがみられ、魅力的な作品を残している。

 

その作風から、まもなく訪れるフランス印象派時代の先駆けとなる色彩や革新的な響きを作り、ショパンとシマノフスキの橋渡しをする、まぎれもなく19世紀後半の最も優れたポーランド作曲家の1人であることを示している。